マレーシアでのかかりつけ病院は、キリスト教系の総合病院だった。家から一番近い総合病院という単純な理由で通っていたが、そこは行くのが楽しみな病院だった。
院内にベーカリーがあり、毎日焼きたてのパンがつくられ売られている。シナモンブレッドが看板商品だったが、全粒粉や雑穀入りの食パンは有名で普通にスーパーでも売られていた。ほかにも素朴なあんパンやおかずパンもあり、パンだけわざわざ買いに来る人もいて、いつ行っても混雑していた。地元日本人会のバザーにも毎年、快くパンを提供してくれて、参加者は楽しみにしていた。
店内にはパンだけではなく、有機野菜やオーガニックの食材、ベジタリアン向けの食品なども置いてあり、行くたびに立ち寄ってはついつい買いすぎてしまい、重い荷物を抱えて病院を後にしていた。
院内にはカフェテリアもあるのだが、そこもベジタリアン仕様。病院が治療だけではなく、健康な食生活を提案しているといった感じか。実際は、宣伝も提案も特にはしておらず、ただ、当たり前にそうしているという感じであったけれど。
診察料は安いわけでもなかったが、私立病院としては特別に高いわけでもなかった。スタッフに聞くと、日曜日は休息日のため、その日の診察料は緊急手術も含めすべて寄付されるとか。それも、特別なことをしているというような言い方ではなかった。
もちろん日ごろの診察も的確で、説明も丁寧、スタッフはフレンドリーで病院自体のファンでもあったけれど、地域への貢献となることをさりげなく行い、愛されているこの病院が好きだった。
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